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広島高等裁判所 昭和57年(ネ)215号 判決 1982年12月23日

控訴人(原告)

山申尚宏

ほか二名

被控訴人(被告)

吉田桂二

主文

原判決中控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子に関する部分を次のとおり変更する。

被控訴人は、控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子に対し各金八六〇万九四〇七円及び内金八一〇万九四〇七円に対する昭和五五年一二月七日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子のその余の請求を棄却する。

控訴人山田尚利の本件控訴を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じ、控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子と被控訴人との間に生じた部分はこれを二分し、その一を被控訴人の、その余を同控訴人らの負担とし、控訴人山田尚利と被控訴人との間に生じた部分は同控訴人の負担とする。

この判決は金員給付を命ずる部分に限り仮りに執行することができる。

事実

一  申立

(控訴人ら)

原判決中控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子の請求に関する部分を次のとおり変更する(当審において請求を拡張した部分を含む。)。

被控訴人は、控訴人山田尚宏、同山田ヨシ子に対し、各金一七三六万九五八六円及び内金一六三六万九五八六円に対する昭和五五年一二月七日から右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原判決中控訴人山田尚利の請求に関する部分を取消す。

被控訴人は控訴人山田尚利に対し金一〇〇万円とこれに対する昭和五五年一二月七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

仮執行の宣言。

(被控訴人)

本件各控訴(請求拡張部分を含む。)を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

二  主張

当事者双方の主張は、次のとおり補正するほか、原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。

原判決四枚目表五行目の「自動車」の次に「損害」を加え、五枚目表七行目の「三九〇九万三〇〇〇円」を「四一六一万九二七二円」に、同表一〇行目の「昭和五四年」を「昭和五五年」に、同裏五行目の「三九〇九万三〇〇〇円」を「四一六一万九二七二円」にそれぞれ改め、六行目の「となる。」の前に「(計算方式は別紙のとおり)」を加える。

同七枚目表一行目から二行目にかけての「一六一〇万六四五〇円」を「一七三六万九四八六円」と、二行目の「一五一〇万六四五〇円」を「一六三六万九五八六円」と、八行目の「(六)を否認し」から九行目の「認める。」までを「(一)ないし(五)の事実全部及び(六)の事実のうち横断歩道の信号が青であつたことを認め、その余の事実は否認する。」と改める。

三  証拠〔略〕

理由

一  請求原因1(本件事故の発生)の事実中(一)ないし(五)の全部及び(六)のうちで横断歩道の信号が青であつたとの事実は当事者間に争いがない。

しかして、本件事故の態様についての当裁判所の判断は、後記のとおり付加訂正するほか原判決の理由(原判決八枚目裏九行目の「そこで」から九枚目表六行目まで)と同一であるからこの部分を引用する。

1  原判決八枚目裏末行の「同二〇号証、」の次に「同二五ないし二九号証、」を加える。

2  同九枚目表六行目に続いて、次のとおり付加する。

「(二) 被控訴人は、前記交差点にその西方から東進して差しかかり、同交差点の対面の信号が青色を表示しているのをその手前一六六メートルの地点で認めたが、以後同信号に注意を払わなかつたので同信号が赤色表示に変つたのを見落し、時速約二五キロメートルの速度の同交差点内を直進し、漫然前記大型貨物自動車の左側方から同交差点東詰横断歩道を通過東進しようとしたところ、折から、被害者山田真弘(当一二歳)が右横断歩道の歩行者用信号が青色に転じたのに従つて(この点当事者間に争いがない。)同横断歩道を南(右方)から北(左方)へ小走りに横断しているのを前方約六メートルの地点に初めて発見し、急制動の措置をとつたが及ばず、自車右前部を同人に衝突させ、同人を約八メートル前方路上へ転倒させた。」

二  請求原因2(責任原因)、同3の(一)ないし(三)の入院付添費、入院雑費及び葬儀費についての当裁判所の認定判断は、原判決の理由説示(原判決九枚目裏八行目から同末行まで、同一一枚目表四行目から同末行まで、同裏二行目から七行目まで)と同一である(但し、一一枚目表一〇行目の「同ヨシ子」の次に「(成立に争いのない甲第三号証によると両名は真弘の両親であることが認められる。)」を加える。)から、これを引用する。

三  逸失利益及び相続について

この点に関する当裁判所の認定は次に付加訂正するほか原判決一〇枚目表三行目から一一枚目表二行目までの説示と同じであるから、これを引用する。

一〇枚目表八行目の「そして、」の次から九行目の「(賃金センサス)」までを「成立に争いのない甲第二三号証(昭和五五年度賃金センサス)」と改め、末行の「、ベースアツプを考慮して」を削り、裏一行目の「二八万一六〇〇円」を「年間三四〇万八八〇〇円」と、「二、三行目の「三三七万九二〇〇円」を「右金額」と、七行目の「二二九〇万七二五八円」を「二三一〇万七九一四円」と、八行目を「(3,408,800/2×(18.6334-5.0756)=23,107,914)」と、九行目の「成立に争いがない」を「前掲」と改める。

四  慰藉料について

当裁判所の認定判断は、左の点を補正するほか原判決の理由説示(原判決一一枚目裏九行目から一二枚目裏二行目まで)と同一であるから、これを引用する。

原判決一二枚目表五行目の「一切の事情」の次から六行目の「斟酌する。)」までを削り、八行目の「五〇〇万円」を「六〇〇万円」と、九、一〇行目の「被害者の兄弟」から同裏一行目の「父母がおり、他に」までを「民法七一一条所定の被害者の父母、配偶者及び子に該当しない者でも、被害者との間に同条所定の者らと実質的に同視しうべき身分関係を有し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は同条の類推適用により加害者に対し直接に固有の慰藉料請求をしうるものと解することができる。控訴人尚利が被害者の唯一人の兄弟(兄)であることは前掲甲第三号証により明らかであるけれども、同控訴人が右の要件を具備していることについて」と改める。

五  過失相殺について

本件事故の態様は、先に認定したとおりであつて、被控訴人が自己の進路前方の信号に注意を払わなかつたため、それが赤色を表示していたのを見落し、横断歩道を青信号に従い横断中の被害者に衝突したものであるから、被控訴人の一方的過失に基づくものというべきである。従つて被控訴人の過失相殺の主張は採用することができない。

六  損害の填補、弁護士費用について

当裁判所の認定判断は、原判決理由説示(原判決一三枚目表六行目から同裏五行目まで、ただし表一〇行目を削る。)と同一であるから、これを引用する。

七  よつて、控訴人尚宏、同ヨシ子の本訴請求は、被控訴人に対しそれぞれ八六〇万九四〇七円及び右金額から弁護士費用五〇万円を控除した八一〇万九四〇七円に対する昭和五五年一二月七日(本件事故により真弘の死亡した日の翌日)から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきであるから、これと異なる原判決を右の趣旨に従つて変更し、控訴人尚利の本訴請求は理由がないからこれを排斥した原判決は相当であつて同人の本件控訴は棄却すべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九五条、九三条、九二条、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 福間佐昭 大西浅雄 中村行雄)

山田真弘逸失利益現在価額計算書

<省略>

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